PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


煥先輩の声を、鮮やかに思い出すことができる。



透き通ったトーンでささやいたフレーズ。


ギュッと顔をしかめて張り上げるシャウト。


しなやかに伸びる高音。


包み込むような低音。



どんな歌い方をするときも、誰の声とも似ていない。


誰の声を加工して整えたって、煥先輩の声には及ばない。



牛富先輩がドラムセットから立って、パソコンを操作した。


ミックスされた雑踏の音源が、スピーカーから流れ出す。


『ビターナイトメッセージ』のイントロだ。



亜美先輩がベースの一音を放つ。


完璧なタイミング。


雑踏が耳を澄まし始める。


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