PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
煥先輩はスタスタとドアに向かう。
わたしは慌ててカバンをつかんだ。
小夜子が声をあげた。
「待って、煥さん!」
煥先輩が無言で振り返る。
小夜子は胸の前でギュッと手を握った。
「わたしも一緒に行っていいですか? 嫦娥《じょうが》公園のそばまで」
煥先輩がそっぽを向いた。
「ダメだ」
「ど、どうして……」
「面倒見きれねえ」
小夜子は、イヤイヤをするように首を左右に振った。長い黒髪がふわりと舞い上がる。
【お願い! 一緒に帰りたい!】
文徳先輩が、頭痛でもするみたいにこめかみを押さえながら、煥先輩に言った。
「鈴蘭さんと小夜子さんを送っていけ」
煥先輩は目を丸くした。
でも、口答えせずに、しぶしぶといった様子でうなずいた。