PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―



煥先輩はスタスタとドアに向かう。


わたしは慌ててカバンをつかんだ。


小夜子が声をあげた。



「待って、煥さん!」



煥先輩が無言で振り返る。


小夜子は胸の前でギュッと手を握った。



「わたしも一緒に行っていいですか? 嫦娥《じょうが》公園のそばまで」



煥先輩がそっぽを向いた。



「ダメだ」


「ど、どうして……」


「面倒見きれねえ」



小夜子は、イヤイヤをするように首を左右に振った。長い黒髪がふわりと舞い上がる。



【お願い! 一緒に帰りたい!】



文徳先輩が、頭痛でもするみたいにこめかみを押さえながら、煥先輩に言った。



「鈴蘭さんと小夜子さんを送っていけ」



煥先輩は目を丸くした。


でも、口答えせずに、しぶしぶといった様子でうなずいた。


< 373 / 555 >

この作品をシェア

pagetop