PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


煥先輩は手をほどいた。


両手をブレザーのポケットに入れて、黙って再び歩き出す。


顔が赤くなっているかどうか、後ろ姿からは見て取れない。



嫦娥公園のそばで、小夜子と別れた。


小夜子はわたしを見なかった。


煥先輩にだけ笑顔を向けて、ペコッと頭を下げる。



「送っていただいて、ありがとうございました! 少しだけでも、お話しできて嬉しかったです。次のライヴも絶対に聴きに行きますね!」



煥先輩は「ああ」とだけ応えた。



小夜子が嫦娥公園のほうへ去って行った。


わたしは結局、小夜子と一言も話さなかった。


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