PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
「地球は、青く輝く宝珠だ」
嫦娥《じょうが》公園の月の女神の祠《ほこら》は、不老不死を司るという。
神秘的なたたずまいだ。
澄んだ水をたたえる池、ほっそりと設けられた遊歩道、白い花を咲かせる木々。
ツツジとコデマリが咲いた公園を歩けば、若葉の新芽の匂いがする。
レトロな形の外灯がポツポツと立って、白い明かりをともしていた。
時刻は十八時を回ったところだった。
満月はもう空で輝いている。
ベンチに掛けた平井さんは、にこやかにわたしを迎えてくれた。
「こんばんは。今夜は月が明るいね」
古風で上品な、たぶんオーダーメイドのスーツ。
ベンチを勧めてくれる紳士的な仕草が、平井さんにはよく似合う。
わたしは頭を下げた。
「こんばんは。お隣、失礼します」