PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
平井さんはなつかしそうな目をした。
わたしの父と同じくらいの年齢?
最近、多忙な父とは話していない。
小さいころは、父に本を読んでもらうのが好きだった。
「わたしは、自分を持ってません。すごくフラフラしてます。人に迷惑をかけてばかりで、人を傷付けてばかりで、何の役にも立てない人間なんです」
平井さんは人差し指を立てた。
「一つ、言っておこうか。フラフラするのは当然だよ。その柔軟性が人間の特質だからね。大いにフラフラしてみなさい。
役に立つことだけが、人間の価値かな? そう肩肘を張らなくていいじゃないか。生きることは、仕事じゃあないんだよ」