PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


「海牙さんって、文系教科もできるんだ」


「理系教科に比べると、苦労していたがね。全部読むまでに、一年近くかかったかな」


「えっ、一年?」


「返り点なしの漢文を、きみは読めるかな?」


「無理です」


「高校生の学習の範囲では、読めないのが当然だ。海牙くんも同じだよ。最初の一行を読めるまでに、三日かかっていた。必死でやって、だんだん読めるようになった」



コピーされた本文をよく見ると、返り点の下書きの痕跡がたくさんあった。


消しゴムでキレイに消してあるけれど、強い筆圧のくぼみは残っている。



「どうしてこんなに頑張れたの?」


「未処理の情報を、どうにか処理したかったんだ。預かり手である自分とは何者なのかを知るために」


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