PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


小夜子が両手を空に掲げた。星空を支配する満月の光を浴びながら、小夜子は歌うようにわたしを嘲った。
「チカラを持つ身でありながら非力なのね、青龍。おまじないに、お守り。夜空を見上げて、願いごと。チカラを込めた願いなんて、久方ぶりに聞いたわ。だから、わたしが目覚めたの」
「わたしが、願ったから?」
「そうよ、青龍の願いが聞こえた。でも、何なの? 恋が叶いますように? 笑わせないで。自分で努力もせずに、恋に恋して浮かれてるだけ。まあ、わからないでもなかったわ。生身の体で恋をするのは、ワクワクするものなのよね」
 小夜子の両手の間に、輝きが生じる。長い長い、背丈ほどに長い、一振りのツルギだ。月の光を具現化したような刃が、金とも銀ともつかない色にきらめいている。


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