PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
小夜子がわたしに向き直った。
その顔に、もう微笑みはない。
わたしは刃のきらめきを見た。
切っ先がわたしを狙った。
何が起こるのかわかっていた。
なのに動けなかった。
たぶん全員が同じ状態だった。
ツルギを構えた小夜子が、宙を滑る。
わたしのほうへ突っ込んでくる。
「青龍、あなたが嫌い」
小夜子の声がハッキリと耳に届いた。
次の瞬間、わたしはツルギに胸を貫かれた。
痛みを感じるより先に、時間と空間が消滅した。
消滅の間際に知った。
わたしは違反者じゃない。わたしは青獣珠に願っていない。
違反者は、小夜子。
月という宝珠の預かり手。
その小夜子が願った。
【何でも差し出すから、どうか、この恋を叶えて】