PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
海牙さんが「あっ」と声をあげた。
「変ですよね、これ」
「海ちゃん、変って何が?」
「受信時刻ですよ。まったく同じタイミングに二通ずつ」
「あ、ほんとだ」
煥先輩は重そうな口を、無理やりみたいに開いた。
「巻き戻るたびに、同じタイミングでメールが来た。それが消えずに残ってる。内容も、巻き戻しを感知してる文面だ」
「あっきー、どうして黙ってたの? このメール、めちゃめちゃ怪しいじゃん」
煥先輩は即答しない。
口元を大きな右手で覆う。
うつむいた前髪のせいで、表情がわからない。
沈黙の後、ようやく煥先輩は答えた。
「鈴蘭だと思ってた」