PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
一瞬、呼吸が詰まった。
そして呼吸が再開する。わたしのリズムとは違う呼吸が。
小夜子だ、と感じた。
小夜子の呼吸に同期させられている。
ピシピシと、全身に小さな痛みが走った。
皮膚が裂けて血が流れ出す。
小夜子を見る。
今、加えたはずの傷が消えている。
「痛みと傷を、移された?」
わたしの癒傷《ナース》と同じように呼吸を同期させて。
でも、傷を治さずに移動させた。
「青龍、おびえている顔ね。わたしが怖い? 満月の夜は特別なのよ。月聖珠が最も正しく姿を現す夜。わたしにはチカラが満ちている。
知ってる? 月は狂気《ルナシー》を司るの」