PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


一瞬、呼吸が詰まった。


そして呼吸が再開する。わたしのリズムとは違う呼吸が。


小夜子だ、と感じた。


小夜子の呼吸に同期させられている。



ピシピシと、全身に小さな痛みが走った。


皮膚が裂けて血が流れ出す。



小夜子を見る。


今、加えたはずの傷が消えている。



「痛みと傷を、移された?」



わたしの癒傷《ナース》と同じように呼吸を同期させて。


でも、傷を治さずに移動させた。



「青龍、おびえている顔ね。わたしが怖い? 満月の夜は特別なのよ。月聖珠が最も正しく姿を現す夜。わたしにはチカラが満ちている。

知ってる? 月は狂気《ルナシー》を司るの」


< 472 / 555 >

この作品をシェア

pagetop