PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


小夜子がツルギを下ろした。


怖くて不気味で狂気的な姿は、だけど美しかった。


乱れても汚れてもいない長い黒髪と白い肌。


口元には清楚な微笑みをたたえている。


月の輝きがツルギに映り込んでいる。



次はどうなる? 誰が攻撃される?


わたしは小さなツルギにすがって身構える。



そのときだった。



小夜子の動きが止まった。


後ろから抱き止められている。


笑顔が驚きに固まる。



銀色の髪が、黒髪に交じるように揺れた。



「どうして、煥《あきら》さん……」



煥先輩が、後ろから小夜子を抱きしめていた。


金色の靄《もや》を腕と足に絡み付かせたままだ。


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