PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


小夜子が唇を噛んだ。


悔しそうに、泣き出しそうに、顔を歪めた。



「煥さんがほしい。それ以外、何もいらない」


「渡してやるわけにはいかねぇな。この醜《みにく》くて黒くて重たいモノ、こんなにどうしようもねぇモノを、誰かに持たせるなんて、できねぇよ」


「え?」


「キレイな何かだと勘違いしてんだろ? オレは、そんなんじゃない」


「勘違いなんかじゃないです! 煥さんは、わたしにとっていちばんキレイで、いちばん価値があって、いちばん大切で、何よりも大切で、いちばん……」



小夜子が息を呑んだ。


煥先輩がささやくように歌っている。


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