PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


悩みながら書いた歌だと聞いた。


悩みを晴らしたのは、ブルームーン。


そのメッセージを贈った小夜子に、煥先輩は語りかけるように歌った。



  青い月よ 消えないで

  この胸の叫びは飼い慣らせないから



小夜子の手からツルギが落ちた。


ガラン、と音をたててツルギが転がった。


小夜子は目を閉じてうなだれた。



歌が続く。


痛みをこらえて震える声で、優しいといえるほどに慎重な声で、煥先輩は歌い続けている。



みんな、ただ聴いていた。


戦いと呼ぶにはあまりにも穏やかで、だけど、予感がある。


歌が尽きるときに悲しみが訪れる、そんな予感。


始まってしまった戦いは、必ず終わる。


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