PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
さて、と長江先輩が口にした。
「そろそろケジメをつけよっか? きみもほんとはわかってんでしょ? こんなやり方じゃ、あっきーが手に入らないってこと。
因果の天秤ってやつを狂わせた罪、軽くないよ?」
海牙さんが、乱れた髪を掻き上げる。
「思考実験をしてみましょうか? 仮に、煥くんがきみの意に沿わない選択をしたら?
きみはまた誰かを刺して、時間を巻き戻しますか? 煥くんを思いどおりに動かすまで、何度も?」
小夜子は、人形のようにこわばった頬で海牙さんを見上げた。
「何が言いたいの?」
「人間の精神は案外、もろいんです。煥くんは巻き戻しを記憶している。きみの都合のために巻き戻しを重ねるとして、
繰り返すほどに、煥くんの精神には負担がかかり、疲弊して崩壊していく。きみはそのほうがいいのかな。煥くんが壊れれば、意にままに操れるんだから」