PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
瑪都流という響きに、痛いくらい強く彼を思い描いた。
銀色の髪、金色の目。歌う声、戦う姿。
いじけたようにそっぽを向く人。
風のようにバイクを操る人。
一度も笑顔を見せてくれない人。
自分の優しさに気付いてない人。
悲しくなるほど鈍感な人。
同じ時間の流れを経験して、何度も守ってもらって、わたしの心に、こんなに強く存在している。
煥先輩。
「お嬢? おーい、お嬢ってば!」
「ひゃっ?」
寧々ちゃんがわたしの前で手を振っている。
尾張くんが呆れ顔をしていた。
「安豊寺、どっかにトリップしてただろ。勉強のしすぎか?」
「えっ、いや、その……」