PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
ひとけのない廊下を歩く。
軽音部室のドアが開いて、煥先輩がわたしを見付けて、ふぅっと息を吐いた。
「三度目だな。兄貴のケガ、頼む」
わたしのチカラに、瑪都流は少しだけ驚いた。
全員、わたしが来ることは知っていた。
文徳先輩はわたしにお礼を言って、種明かしした。
「今朝のこと、煥に問い詰めたんだ。そしたらこいつ、いろいろあったんだ、放課後に部室に来るはずだ、って言ってね。煥が世話になったみたいだね。不思議な話だけど」
「いえ、そんな。お世話になったのはわたしのほうです」
雄先輩が、煥先輩をからかった。
「新曲の詞が完成したのって、ひょっとして、こちらのお姫さまのおかげ?」
煥先輩は肯定も否定もしなかった。