PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
ドアを開ける瞬間、呼び止められた。
「おい、待て」
文徳先輩じゃなくて、煥先輩だ。
「……失礼しました」
わたしは部屋から飛び出した。
カバンを胸に抱えて、誰もいない廊下を走る。
やってしまった。
文徳先輩がケガしていた。
見過ごせなかった。
だって、わたしならすぐに治してあげられる。
でも、わたしのチカラは普通じゃない。
「特別」ならまだいい。「異常」と思われたかもしれない。
化け物だよね? 気持ち悪いよね?
めちゃくちゃに走った。
いつの間にか靴箱の前にいる。息が切れて苦しい。
「嫌われたら、どうしよう……」
わたしはうずくまった。