PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
リスがふさふさの尻尾を揺らして逃げていった。
師央は木を見上げて、小さな両手を振った。
それから、こっちへ駆け戻ってくる。
煥さんが腰をかがめて師央を迎えて、軽々と抱え上げる。
金色の目が、まっすぐにわたしを見た。
「鈴蘭」
煥さんは真剣な表情だった。
わたしはドキドキしてしまう。
今でも、わたしは煥さんに恋をしている。
「何、煥さん?」
「順番だと思ってたんだ。オレより先に、兄貴に式を挙げてほしくて。だから、待たせたな」
「どういうこと?」
「鈴蘭に告白されたとき、オレは格好がつかなくて。その後も全部だ。いろいろ全部、鈴蘭のほうからで、ちゃんとしたプロポーズも結局してない。
オレはこういう人間だから、仕方ないんだが」