PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
ふと、文徳先輩の言葉が脳裏をよぎった。
困ったことがあったら、頼ってほしいな。
そんなふうに言ってくれたのは、ほかならぬ文徳先輩だ。
「わたし、行ってみる」
文徳先輩なら、わたしの不安と恐怖と謎に向き合ってくれるかもしれない。
すがるような思いで、わたしはカバンを抱きしめて走り出す。
文徳先輩が、わたしに右手を挙げる。
左肩には、ギターケースが引っ掛けられている。
「おはよう」
「お、おはよう、ございますっ」
「そんなに走って、どうしたの? 何か急ぎの用事?」
「あ、いえ、その……」
先輩二人が共犯者みたいに茶々を入れる。
文徳先輩が少し困った顔をする。
わたしはどんな会話をした?
そう、文徳先輩がギターを弾くと知った。