PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
「文徳先輩、楽器をされるんですね」
「ああ、バンドやってるんだ。ギターだよ」
素晴らしいと言うわたしに、文徳先輩は微笑む。
嘘をついている顔じゃない。
これは演技なんかじゃない。
本当に、十五日の朝の光景だ。わたしが記憶しているとおりの。
生徒会の話をして、でも少し流れが変わる。
最初の十五日の朝には、名前の呼び方の話をした。
でも今、わたしはもう「文徳先輩」と呼んでいる。「伊呂波先輩」ではなくて。
そして、もう一つ。
記憶の中の流れとは違う言葉が、わたしをまっすぐに貫いた。
「おい。もしかして、あんたもか?」
低く澄んだ声は、ささやきですら、よく通る。
感情が読みづらいはずの声なのに、今のはわかった。
驚いている。