Heaven~第一章~
「ちょっと、いつもこうなの?」

私は助手席に居る幸二に声をかけた。

「違うけど、面倒なら名前ぐらい呼んでやれば良いじゃん」

「え?」

「名前ぐらい簡単じゃん。変なこと言われてる訳じゃねーんだし」

チッとまた舌打ちをしてから「獅朗……」と小さく呼ぶとやっと獅朗の手が離れた。

気がすんだのか、獅朗はそれから学のマンションに着くまで何も話さなかった。
何を考えてるのか分からない……

そして車内は居心地が悪い。

窓の外に視線を向け瞳を閉じた。
今、この意味の分からない現実を見ないように。

「寝た?」

幸二の視線を感じながら「寝れるはずないじゃん」と瞳を閉じたまま答えた。

「まぁ、そりゃそうだ」




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