Heaven~第一章~
黒いスモークのせいで人影としか分からない。
瞳を凝らすように窓ガラスに近づくと、それが誰かはすぐ分かった。

「学!」

その人影の名前を呼ぶと窓が開き、目の前に居る学と視線が合った。

「何やってんだよ」

呆れたような視線を向け、私の髪に触れた。
そして少し屈んで私の奥に居る獅朗へ視線を向けた。

「わざわざ送っくれたのか」

口角を上げ学が獅朗へ言うと、獅朗は無言で私の腕を離した。

「帰ってたんだ」

「あぁ、増子さんから連絡あってな」

「あっ、そっか」

私が悩むまでもなく、今日のことは増子さんから学に連絡が行ってしまっていた。

心配して帰って来たの?
それとも、たまたま?

学の本心を聞けず学を見つめた。

「ん?」と学が私に視線を返す。
私は「何でも……」と小さく首を振り車から降りた。

 
< 108 / 250 >

この作品をシェア

pagetop