Heaven~第一章~
学は私の腕を掴み自分の後ろへ私を少し引いた。

「何のつもりかは知らねーけど、あんまり派手な動きはするなよ」

「分かってる」

「分かってるなら、店にまで行かねーとは思うけどな」

そう言ってから助手席の窓ガラスを叩いた。
助手席の窓が開き幸二が顔を出した。

「お前らも、ちゃんと見張っておけよ。お前らは子分じゃねーだろう。久辺の仲間なんだろう」

「分かってるよ」

ふて腐れるように幸二が答えると、学がまた獅朗に視線を向けて「まぁ、気をつけて帰れよ」と言って私の腕を掴んだまま車から離れて行った。

マンションへ入るまで車が走り出す様子はなかった。
だからなのか、学は足早にエレベーターに乗りボタンを押した。

さっきまでは普通だった学なのに、エレベーターの中では何も話そうとはしない。
隣に居れば、機嫌が悪いことぐらいは分かった。

だから、私も何も言わず学の隣に立っていた。


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