Heaven~第一章~
罵倒されても心はもう傷まない。
殴られても体はもう痛まない。

残るのは無数に出来る痣。
残るのは消えない記憶。

あぁ……
また繰り返されて行くんだ……――
逃れても逃れ切れない。
相手が変わるだけで、何も変わらない。

忘れていた。
私はこう言う人生なんだ。
産まれ持った運命なんだろう。

諦めれば何も辛いことなんてない。
こうなったことも全て納得出来る。

この痛みが現実かそれとも過去の記憶か分からなくなってきた頃、私は意識を手放した。

それから意識が戻るまでどのくらいの時間が過ぎていたのか、
時間の感覚も体の感覚もない。

ただ、帰らないと……
学が居るあのマンションに……

それだけを強く思っていた。


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