Heaven~第一章~
私も、学も、周りに居る誰もが考えもしていなかった。
堕天使の縄張りのこの店で何かが起きるなんてことを……――

カウンターで飲み物を注文していると「椿、さん?」と声をかけられた。

振り向けば見たこともない男。
返事をする変わりに怪訝な顔をすると「警戒しないでよ。この店で君に変なこと出来る奴なんて居ないんだし」と琥珀色の瞳を細め笑った。

「何?」

そう答えたのはその言葉に納得したから、

「桐谷の彼女なんだって?」

「違うけど……」

「違うの?おかしいなぁ……」

「何が?」

「いや、君と付き合ってるって聞いたからさ」

琥珀色の瞳が私から学に移った。

「え?」

「彼女って聞いたから納得したんだけど……違うんだ」

「納得って?」

「あの奥……」

今度は琥珀色の瞳がカウンターの横にあるドアに向けられた。


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