Heaven~第一章~
私の髪を掬い胸元をなぞる。

っつ、
不快に顔が歪む。
なぞる手がギュッと私の胸を鷲掴みにしている。

ククッと楽しそうに喉を鳴らし「そそるね」と口元を緩める。

男の言っている意味が理解出来ない。
こう言う時は泣いて許しをこうのだろうか。
この男の力に屈するのだろうか。

普通が分からない。
心が何も感じない。
"恐怖"も"快楽"も何も感じない。
自分だけど自分じゃない。

気持ち悪い……――

能面のように表情がないこの男よりも……――
琥珀色に映り出されている自分が……――

琥珀色の瞳に映る自分が、
無表情の自分が近づく。

フワッと男の髪が私の首筋に触れた。

「痛っ」

尋常ない痛み。

「マーキング」

口角を上げ笑う男。
マーキングのような痛みじゃない。
もうマーキングじゃないじゃん。

男は私の右肩に綺麗な歯型を残した。



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