Heaven～第一章～
呆れて何も言えない。
そんな噂信じる奴なんて居ないだろう……
って言うか、そんな話噂レベルにもならない。

｢……そんなの嘘に決まってるじゃん｣

｢そんなの知ってるよ｣と男はゲラゲラ笑い出す。

｢それが真実か嘘かは関係ないんだよ。実際、桐谷も久辺もあんた……椿姫にご執心なのは事実だからね。その椿姫が自分のモノになれば、桐谷も久辺も思いのまま……まぁ、そんな感じなんだろうけどさ｣

｢くだらない｣

｢いや～椿姫とは気が合うね！俺もくだらないと思うよ。そんなことしないで二人いっぺんに潰しちゃえば良いだけなのに｣

私が知らない学と獅朗の世界。
生半可に関わってしまった世界。

私が知らない学。
私が知らない獅朗。

｢椿姫も災難だね。あんな男二人に気にいられて｣

だけど私は、
この男が知らない学を知っている。
この男が知らない獅朗を知っている。

この男は私を何も知らない。
学も獅朗も知らない。

災難だったのは私じゃない。
きっと学と獅朗の方だ。


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