Heaven~第一章~
「椿!」

「学……――」

学にしか見せてないのに、
こんな男に見られたくない。

「古い……ね」

男の指先が私の古傷をなぞって行く。

「誰にやられたの?」

私は首を左右に振り「やだ!やだ!」と男の話しを聞かず泣いて叫んだ。

「大丈夫……大丈夫……」

男がギュッと私を抱きしめた。

「椿に触るな!」

獅朗の声に「残念だけど、この子は久辺の手にはおえないよ」と言ってから「桐谷……」と学に視線を向けた。

「離れろ」

低い低い学の声。

「同じだ」

男は自分の上着を脱ぎ私を見下ろした。



同じ……――
男の体にある無数の古傷。
無表情の男の顔。
琥珀色の何も映さない瞳。

この男はこうして、自分を守っていたんだ。

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