Heaven~第一章~
キツく結ばれているロープを何とか解くと学はすぐに自分の上着を私に着させた。
そしてすぐに獅朗のロープを解いた。

「椿、大丈夫か?」

獅朗の視線が私に向き、私に触れようと腕を伸ばす。

無意識だった。
とっさに学の背中に隠れてしまった。

「……椿、」

獅朗から戸惑いの声が聞こえ「あっ、ごめん……」と獅朗から視線をはずした。

真っすぐ見つめる獅朗の瞳を私は見つめることが出来なかった。
深い、深い、
暗闇のような瞳。

今はその瞳に全てをさらわれそうで怖かった。

ギュッと学の腕を掴むと「悪い。先に帰るわ」と私の背中に腕を回した。

「ごめんね……獅朗」

俯く私に「心配するな」と言ってくれた。

「行くか」

学の言葉に頷き私は学とその部屋を出た。


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