Heaven~第一章~
「他にはどこ触られた?」

「触られてないよ」

「本当かよ」

「本当だよって言うか近い」

グイッ今度は私が学の顔を押した。

学が普通に接してくれて良かった。
学が笑ってくれたから私も笑える。

学のマンションに着くまで、あの男のことは一切話はしなかった。

聞きたいことは沢山あった。
フォックスと名乗っていたあの男の正体。
あの雑居ビルをどう見つけ出したのか……

きっと学だって、あの男のことを私に聞きたいはずなのに。

「落ち着いたら久辺に連絡入れておけよ」

学の意外な言葉に驚いた。

「あいつだって椿のことを心配だったから、あのビルを探し出したんだしな」

「……うん」

そう答え窓の外に視線を向けた。
見慣れた景気にホッとした。


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