Heaven~第一章~
学の部屋に戻ると「風呂入るか?」と学がすぐに聞いて来た。

「シャワーだけ浴びる」

「分かった」

私はそう言ってお風呂場へ向かった。
上着を脱ぎ右肩を見つめた。

少し腫れているそこにはまだあの男の歯型があり、肌が変色していた。
鏡越しに自分の古傷を見つめた。


"萎えた"


言葉の使い方としては、この傷を見てやる気が起こらなかったってことだけど……
意味は……――
本当の意味って、

何かを思い出したのかもしれない。
自分の傷と私の傷がリンクして……――



「愛の証……か、」



一度だけ、
その時だけ感じた、はかない中に感じた愛おしさみたいなもの……

琥珀色の優しい光。

私はブルブルと頭を振り考えないように、熱いシャワーを浴びた。

何を考えても仕方ない。
もう終わったこと……――


< 165 / 250 >

この作品をシェア

pagetop