Heaven~第一章~
そんな蓮沼の肩をポンっと触れ、私達に頭を下げて医者はその場を後にした。

それからすぐに手術室から学が寝ているストレッチャーが運び出された。
静かな廊下にカラカラと言う音が響く。

私は立ち上がり「何処に……学を何処に連れて行くの?」とストレッチャーに手をかけた。
看護士さんは困った顔をするだけで何も教えてはくれない。



「椿」



蓮沼が私の名前を呼び手をストレッチャーから離させる。

「やだよ!学が連れて行かれちゃう」

「椿、」

「だって、学が……――」

止まっていた涙がまた溢れてくる。

認めたくない現実を受け入れなくちゃいけない。

「私は学と帰るの!待ってろって……学が、学がそう言ったんだから!」

蓮沼の胸をドンドンと叩く。
そんな私をギュッと蓮沼が抱きしめ「分かったから、」と宥めるように言った。


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