Heaven~第一章~
誰かの死に触れたことはなかった私には初めての通夜。

それが学のになるなんて想像もしていなかった。

駐車場には沢山の車に喪服姿の人達。
女も男も。
同じくらいの年代の人達。

蓮沼と車から降りると、無言でみんな蓮沼に頭を下げて行く。


「あんたって偉いの?」

「あ?偉くねーよ。この中じゃー1番のビビりだからな」

ニヤリと笑い「行くぞ」と私の背中を押した。



祭壇の学の写真。
今にも声が聞こえてきそうな笑顔。

その写真に手を合わせて瞳を閉じた。
だけど、今の私には学にかける言葉が見つからない。

形だけみんなと同じだけ、
私の心はなかった。

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