Heaven~第一章~
「服は?」

「あぁ~後ろ」


学は顎で後部座席を指す。


私は後部座席に置いてあった紙袋から私服を取りだし、助手席で器用に着替えた。
学はチラッと私に視線を向け「マジ、制服の力は偉大だな」と感心するように言って笑う。


確かに制服の力は偉大だった。
制服さえ着てれば中身は誰だって同じ。
あの男にとってみたら"制服"を着ていることに価値があって、私に価値があるわけじゃない。
私には何の価値もない。


こうして制服を脱いだ私にはきっと誰も興味なんて持ちやしない。



「制服着てればなんだって良いんだよ。あのエロオヤジ」

「エロオヤジって」


何が楽しいのか学はゲラゲラ笑っている。
その時の学の顔は嫌いじゃない。
ちゃんと笑っている顔だから。

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