Heaven~第一章~
良い奴じゃん。
そんな呑気なことを思いながら熱めのシャワーを浴びた。


シャワーを浴び体を洗うたびザラザラした左肩の感触から逃げたくなる。
もう10年も経つのに、その感触が私を過去から離そうとしてくれない。


どんなに逃げても、逃げきれない。
ずっと付き纏う思い出したくない過去。


無数にある黒ずんだ痣。
この痣の数だけ、愛した数だとあいつは言っていた。


擦っても、擦っても、消えることはない。


「痛っ、」


おかげで今日も私の体は赤くなっていた。


リビングへ戻り、群青色のカーテンを閉め夕べのような海の中を作り出し、ソファーに膝を抱え座った。


そして、ジッと優雅に泳ぐ紅尾金龍を見つめていた。


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