Heaven~第一章~
この箱の中に居ると全ての感覚が鈍くなって行く。
あんなに五月蝿いと感じていた音楽も、
むせ返るようなアルコールの匂いやタバコの煙も、

さっきまで感じていた痛いくらいの視線も……

そこに居ることへの疑問もなくなっていた。

本能からなのか、人はそこで生きて行くために順応して行く。
だけど、その順応するスピードが速くて自分でも怖くなって行く。

あまりに速くて、本当の自分が置いてきぼりになってしまいそうで……

カウンターにグラスを置いてさっきの店員に話しかけた。

「あの奥って入れないんですか?」

店員はカウンターの奥に視線を向け「すみません」と私に視線を戻す。

理由も何も教えてはくれないけど"すみません"ってことはそう言うことなんだろう。





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