Heaven~第一章~
驚いたのは私だけじゃなく男も同じだった。


「うわっ、」

「てめぇー、何やってんだよ」


初めて聞いた低くお腹に響くような凄みのある声。
初めて見た不機嫌じゃなく本気で怒っている顔。

男はその姿を見て「あっ、桐谷さん」と動揺していた。

学が私に視線を向けると、男の動揺をまた誘う。


「あっ、いや、桐谷さんの連れだって分からなかったんで……すみません」


男は礼儀正しく学に頭を下げた。
だけど、私は違う。


「学が遅いから話してただけじゃん」


私の言葉に男の顔が青ざめ、それ以上話すなと言う顔で視線を送ってくる。


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