フェアリーサイン
「……んた、……よかった……」
磯野さんは聞き取れなかったのか、えっ? と発して顔を近付ける。
そして、心配そうにあたしの肩に触れようとした。
「……あんたなんか助けなきゃ良かった!!」
そんな手を強く叩き、思いきり磯野さんを睨んだ。
ポロポロと涙が零れた。
磯野さんは、真っ直ぐあたしを見つめながらただ黙っていた。
「……あ、ゴメンなさい……」
手をギュウッて握って、磯野さんは静かに立ち上がり、俯いて教室に入っていた。
ドアが閉まる音が、静かな廊下に響く。
磯野さんのすごく悲しそうな表情が瞼に焼き付いて……。
あの、ふでばこを蹴り上げた時の表情より胸の深くに突き刺さった。