フェアリーサイン
「さよなら~」
これ以上、ここに居ても時間のムダ。
そう判断したあたしは玄関へと足早に向かった。
が……
「おい、まだ話が終わってねぇーよ……」
ドスのきいた声が響く。
開けたドアがバタンと閉まった。しかも、誰も触れていないのにガチャっと鍵までかかった。
どうなってるの? コレ?
ていうか、キャラが変わってない? さっきまでムカつくくらいブリブリだったのに。
あたしは、そいつが居る方に体を向けた。
けど、コレが妖精って……。
あたしはそいつの姿、形を凝視する。言葉通り上から下まで穴が開くほど見てやった。
サイズは小さく、昔持っていた着せ替え人形と同じくらい。
けど、顔立ちは意外とはっきりしてて、あたしより歳上な気がする。
てか、ちょっと悔しい事に超イケメン!
黒いサラサラの髪に白くきめ細やかな肌。スゥッと伸びた鼻筋。
くっきりとした二重瞼(ふたえまぶた)の瞳。
綺麗な形をした赤い唇。
ヤバい、フツーの人間のメンズなら落ちてたわ。恋に。
けど、惚れない。
だって、背中に羽根があるんだよ! こいつ。
しかも、天使とか蝶みたいな綺麗な羽根じゃなく、コウモリみたいな黒い羽根だよ。
そりゃ、ないわ。ひくひく、萎えるっしょ?
てか、コレが妖精……?