フェアリーサイン
「莉音、口が悪いね」
そう冷ややかな口調でヤツに言われて、今思っていた事が全部口に出ていた事に気付いた。
「そうよ、口悪いよ。それが何よ? ていうか、何であたしがあんたの願いを叶えなきゃいけないの?」
意味分からないよ!! そう怒鳴り散らすとヤツは、座っていた本からふわっと軽やかに降りて、あたしの周りを飛び回る。
「普通に考えてごらんよ。
だって、スッゲー気持ちよく寝てたのに見ず知らずのヤツにいきなり起こされた上に君はそんなヤツをご主人として願いを叶える気になる?」
そいつは、意外と冷静な口調であたしに言い聞かせた。
た、確かに……。よく考えれば、めちゃくちゃムカつくな……って納得しちゃダメ!!
あたしは、頭を横に振って今思った事を振り払った。
「でしょう? やっぱりムカつくよね?」
けど、こいつにはあたしが今思っていた事が聞こえたのか鋭く突っ込んでくる。
「だ、だからって、あたしがあんたの願いを叶えてあげる理由はないと思うんだけど……」
感情的になっちゃ負け。自分を叱咤して、頑張って平然とした態度で聞き返す。
「それが、あるんだよ。妖精の眠りを妨げたら犯罪になるんだよ」
ヤツは、人差し指を立ててあたしの目の前をふわふわと浮いている。
は、犯罪って……。