フェアリーサイン
「そんな、別に起こすつもりなかったし……ていうか、鈴を鳴らして妖精が現れるなんて誰も思いつきしないよ!」
あたしは、手を強く握って反論した。ヤバい。ちょっとムキになってる。
「こんなの単なる事故じゃない!」
ヤバい。かなり熱くなってる。
「うーん、そんなムキになるなよ」
「なってないし!」
背を向けて、顔を隠した。
熱くて、熱くて頭が真っ白になりそう。
「別に、命をよこせとか言わないし。とりあえずオレが眠くなるまでオレに付き合ってよ」
やたら、優しい口調で話すそれに少し頭に掛かっていたモヤみたいなのが薄れた気がした。
「つ、付き合うって……?」
チラッと後ろを向いて聞き返すと、ヤツはニコッと笑った。
「久しぶりに外の世界を見たいんだよ。だから、莉音の世界を教えてよ」
どんな国でどんな風に生きてるのか見せてよ。
この時は、それくらいの“お願い”なら良いかって思った。
だから……。
「それくらいならいいよ。別に」
そう言ってしまった。
この時、この願いをきかなければよかったとひどく後悔する事をあたしは、まだ知らなかった……。