フェアリーサイン
「へっ? ぎゃあっっ!」
背中に誰かが思いきりぶつかってきた。その反動であたしも転んでしまった。
コンクリートに手を擦ってヒリヒリして痛い。
「いったぁ~……」
あたしは体を起こしながら、ぶつかってきた人物に目を向けた。
「あ、ご、ご、ご、ごめんなさい!!!!」
あたしに、ぶつかってきたのは日本人形の様な真っ黒な髪をした女子生徒。同じ制服に同じ色のリボン。
しかも、同じクラス。
彼女を見て、また胃がキリキリ悲鳴をあげる……。
だって……。
あたしは、無言でゆっくりと立ち上がり膝の汚れを叩く。
「ほ、ほ、ほ、本当にごめんね。ご、ごめんなさい。大丈夫?」
そんなあたしに彼女はしつこいくらいに謝る。
「ちょっとぉ~通れないんですけど」
そこへ、彼女の後ろから文句の声。周りには、たくさんの教科書やノートに鉛筆が散らばっていた。
きっと、転んだはずみでカバンから出てしまったのだろう。
「す、す、す、すみません! い、い、い、今、片付けます」
彼女は慌てて、それを押し込む様にカバンにしまうが焦っているのか上手くいかない。
そんな彼女をよそに、後ろにいた生徒達はズカズカと歩きだす。
ノートやプリント、教科書を思いきり踏んでは
「あっ、ごめーん。磯野さん、本当にごめんね」
笑いながら謝っていた。