フェアリーサイン
先生は教科書を丸めて、それで自分の肩を叩きながらあたしを睨み付ける。
「えっ、あ、いやぁ~何がイヤって授業全部ですね~。けど、今のは寝言です」
ヘラッと笑って、バカっぽい口調で話すと、ちらほらと笑い声があがる。
よし! 笑いを取れたら切り抜けられるぞ。
「つまり、それは、俺の授業中に寝てたって事だよな?」
先生の声が、震えている。多分、呆れてるんだろう。いや、怒ってる? あ、どっちもか!
「先生、我慢は身体に毒っていうじゃないですか?」
ヘラッと笑って先生に返した。
本当に、本心を隠すのが、うまくなったなぁ……。あたし。自分でも関心する。
「けど、次から気をつけます! これからは、寝言言わないように静かに寝ますね」
満面の笑みでそう言うと、また笑い声があがった。
先生は、呆れたように肩を落として、もう、いい。席に着けと言って黒板へと身体を向けた。
「さすが、毎日演技してるだけあるな~」
あのバカが、からかう様な口調で声を掛けてくる。椅子を直して、座るその時にあのバカを思いっきり睨んでやった。
覚えておけよ。次、やったら、殺す。
そんな、意味を込めた視線とオーラにさすがのバカも黙った。