フェアリーサイン
「や、やだな~、姫梨ちゃん。アレは純粋に寝言だよ~! そもそもあたし、他人を庇うほど優しい人間じゃないし。てか、あいつのふでばこ蹴り飛ばしたんだよー。そんな人間がどうやって仲良くなるのさ~」
アハハっと笑って誤魔化す。
姫梨ちゃんは、鏡から視線をあたしに向けた。
暫く無表情であたしを見据えていたけど、突然ニコッと優しく笑ってくれた。
「そっか? じゃあ次は莉音がやってよ」
「へっ? 何を?」
「磯野さんと友達じゃないなら、いいよね?」
その時の姫梨ちゃんの表情が、すごく怖かった。無表情で冷たくて……。
「ふでばこを蹴り飛ばすなんて目じゃないえぐい事、やってよ」
あたしの耳元で囁く姫梨ちゃん。
それと同時に昨日の言葉が頭で響く。‘暫くは、様子見よ”
絶対試されてる。ここで断ったら……。
でも……。
ふでばこと言う単語を聞いて、あの時の磯野さんの表情が目に浮かんだ。
今にも、泣きそうな辛い顔してたな。
なのに、あたしを責める事はしなかった……。
あれは、強がってたんだよね?
それをまたさせるの……?
また、あんな表情(かお)させるの……?