フェアリーサイン
第11羽、痛み
「……ね、磯野さんってピアノ習ってないってホントなの?」
演奏を終えた磯野さんに、あたしは声を掛けた。
磯野さんは肩をビクッと揺らして、おどおどとした態度で振り向いた。
「えっ? ……ピ、ピ、ピ……ピアノですか?」
うーん、なんでこんなにきょどるんだろう?
あたしそんな変な事聞いたかな……?
一人腹の中で呟きながら、あたしは、平然とした態度で頷いた。
「あ、はい……。な、な、な、習ってないですね……」
磯野さんは気まずそうに返事をした。
「マジで? 習ってないのにそんなに弾けるなんて超すごいじゃん!」
あたしは、声を大きくして磯野さんに言った。
あ、まただ。また素で話してる。