フェアリーサイン
あたしは早急に帰ろうとドアノブに手を回した。
その時……
「ふぁ~、よく寝たぁ」
男の子の声が聞こえた。
いやいや、止めてください。
男の子の声って、今ここにはあたししか居ないんだから……。
マジ、勘弁してください。
でもね、なんか背中から視線を感じるていうか、人の気配がするんだよ。
怖いんだけど、逃げたいんだけど……。
怖い物見たさっていう感情が勝ってしまい、あたしはかなりぎこちなく後ろを振り返ってみた。
「………………」
何もない。
散らばった本があるだけ。
ひび割れた窓から差し込む午後の木漏れ日と近所の公園で遊んでいる子供の声。
あぁ、きっとこれだ。
自分に言い聞かせて、胸を撫で下ろし、よし! 帰ろう! と思い、ドアノブに視線を戻した。
「よっ!」
「…………っ!」
あたしの視界に映るのは、一人の男の子。
けど、羽付き。さらに通常の男の子にしては小さい。
かなり。15センチ定規くらいのサイズ。
そんな男の子が宙を浮いている。
「……………」
意味が分からない。
これは何? 虫? 鳥? 人?
いやいや、虫や鳥は喋らないから!
けど、人間は飛べないぞ……。
「……………」