フェアリーサイン
「おい! 莉音、お前いつになったらあのキリ達に歯向かうんだよ! 昨日から見てるけど、お前逃げてるだけじゃん!」
あのバカがハエみたく周りを飛び回る。
でも、悔しいけど図星だ。
けど、ハエには分からないんだろう……。
人間社会の複雑さ。特に女の世界の対人関係の難しさ。
こいつには、分かるワケがないんだろうな……?
そんな視線で、ヤツを見てため息を吐く。
「なんだよ? てか、ため息吐くと幸せが逃げるぞ? ただでさえ、お前幸せが少ないんだから!」
嫌な事をさらっと言うな……。
けど、いいよ。幸せが逃げようがどうだって。
今のあたしは幸せが何なのか分からないし。
口には出さず、心の中で呟いてあたしは教室のドアを開けた。