フェアリーサイン





「あ、来たよ……」





カナが小さな声で言った。


顔をドアの方に向けると、オドオドした様子の磯野さんが立っていた。



つい、さっきまでうるさいくらいお喋りしていたのにピタッと静かになる。



「…………………」



磯野さんは、俯いたまま自分の席に向かった。





けど、そこには……。



「…………」



磯野さんの机はなく、ゴミ箱があった。その横に菊の花が置いてあった。



そして……。




磯野さんの事忘れないよ。

天国で安らかに眠ってください


色鉛筆やカラーペンでそんな事が書いてある色紙が置いてあった。




クスクス笑い声が聞こえる。



磯野さんは、ただ、立ち尽くしていた。






俯いていて、表情が見えないけど、その姿が痛かった……。
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