メリー*メリー
はらり、はらり
「どうしていつも花をみているの?」
小さい頃から、友達の男の子にも女の子にも尋ねられた。
ボールや虫を追いかける訳ではなく、花や植物に熱中している僕をきっとみんなは不思議に思ったのだろう。
僕はいつもうまく答えられなくて黙ってしまった。
その度に少し胸が苦しくなった。
全く理由がないわけではない。けれどその理由を言葉にしようとすると、途端それが嘘のように聞こえてしまうのだ。
それはまるで、掴もうとしたらすり抜ける風のように。
けれど、小さい時にはできなかったことも、成長したらできるようになる。小さい頃は知らなかった言葉も、今はたくさん知っている。
いつの頃からか、この胸のうちにある想いも言葉で表すことができるようになって、今は、なぜ植物が好きなのかという問いの答えをちゃんと持っている。
ただ、その答えを口にすることは、きっと僕にはできないけれど。
*
赤いチェックのマフラーを巻き、ポケットに片手を突っ込みながらジョーロで花壇の花々に水をやる。
委員会の仕事でもなければ、先生に頼まれた仕事でもなく、僕の部活動だ。
僕が所属しているのは、園芸部。学校に植わっている植物の管理をするのが主な活動だ。
元から植物が好きだった僕は何のためらいもなくこの部活に入部した。部員は決して多くはない。
花壇に植わっているのはビオラの花。パンジーよりも小ぶりな花で、様々な色があるのが特徴だ。
花壇に植わっているビオラの色は、高貴な濃い紫や、穏やかな薄い紫と優しい黄色など。
同じ株の花でもひとつひとつが違う色をしていて見るものを飽きさせない。
ビオラの花言葉は確か…
「少女の恋」
ふいに声が重なる。
ハッとして振り返ると、そこにいたのは僕のよく知っている女の子だった。
小さい頃から、友達の男の子にも女の子にも尋ねられた。
ボールや虫を追いかける訳ではなく、花や植物に熱中している僕をきっとみんなは不思議に思ったのだろう。
僕はいつもうまく答えられなくて黙ってしまった。
その度に少し胸が苦しくなった。
全く理由がないわけではない。けれどその理由を言葉にしようとすると、途端それが嘘のように聞こえてしまうのだ。
それはまるで、掴もうとしたらすり抜ける風のように。
けれど、小さい時にはできなかったことも、成長したらできるようになる。小さい頃は知らなかった言葉も、今はたくさん知っている。
いつの頃からか、この胸のうちにある想いも言葉で表すことができるようになって、今は、なぜ植物が好きなのかという問いの答えをちゃんと持っている。
ただ、その答えを口にすることは、きっと僕にはできないけれど。
*
赤いチェックのマフラーを巻き、ポケットに片手を突っ込みながらジョーロで花壇の花々に水をやる。
委員会の仕事でもなければ、先生に頼まれた仕事でもなく、僕の部活動だ。
僕が所属しているのは、園芸部。学校に植わっている植物の管理をするのが主な活動だ。
元から植物が好きだった僕は何のためらいもなくこの部活に入部した。部員は決して多くはない。
花壇に植わっているのはビオラの花。パンジーよりも小ぶりな花で、様々な色があるのが特徴だ。
花壇に植わっているビオラの色は、高貴な濃い紫や、穏やかな薄い紫と優しい黄色など。
同じ株の花でもひとつひとつが違う色をしていて見るものを飽きさせない。
ビオラの花言葉は確か…
「少女の恋」
ふいに声が重なる。
ハッとして振り返ると、そこにいたのは僕のよく知っている女の子だった。
< 1 / 95 >