メリー*メリー
「…本当に、泊まる場所、ないんだよね?」


コクコクと何度もレイは頷いた。


「…今晩だけだよ。明日泊まる場所は探すこと。それを守ってくれる?」


レイはパァッと明るい顔で微笑んだ。





帰り道をレイと一緒に歩く。

レイは物珍しい様子であたりを見渡していた。


この子は一体どこから来たのだろう。

なんで空から降ってきたんだろう。

さっき聞いたときはうまく交わされたような気がする。


そんなことを悶々と考えながら歩いていると「椎」とレイに呼ばれた。


「どうしたの?」


振り返ると、「ごめんなさい」と突然謝られた。

レイは申し訳ないというような顔をしている。


「驚かせてしまいましたよね。突然空から降ってきたから」


僕は素直に頷いた。

普通、人が空から降ってくるなんてことは起こらない。

それも、ふわりとゆるやかな速度で舞い降りるなんて。


「天使かと思ったよ」


僕が笑ってそう答えると、レイはきょとんとして数回瞬きを繰り返した。

そしてムッと頬を膨らませた。


「違います!」


「え?」


「天使じゃないです、雪の妖精です!」


「えっ?」


プンプンと怒っているレイの言っている意味がよく分からない。

僕はレイの言葉の意味を理解することを一旦諦めて、別の話題を提案した。


「とりあえず、家に帰ろう。雪がたくさん降ってきた」


牡丹雪はいつのまにか粒が小さくなり、空は白くかすんできた。

このまま、吹雪になってしまうかもしれない、


僕とレイは少し早足で家路を急いだ。


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